きのう お預かりした 一枚の絵はがき
   関東の農村・農家を描いた 向井潤吉の 春の川原の絵である。
   「春 塘しゅんとう」  春の土手という意味である。

春塘 向井潤吉1984

  残雪が 木陰に残る早春の川を描いている。
  川の名は 「入間川いるまがわ」 部分的に「新河岸川しんがしがわ」と呼ばれて、
  明治初年まで 江戸時代の川越を支えた舟運の川である。

  この湾曲する川の石垣の上に 大きな屋根を持つ家が描かれているが、場所が確定出来る。
  東武東上線上福岡駅東口から ふじみ野市役所前を通り 東北へ行ったところ、
  Book Off上福岡店の交差点を 右に折れてやや下ると、橋が見えてくる。「養老橋」である。
        この絵には 橋は描かれていない。
  この 新河岸川の橋を渡った左側が 今は廃業して いくつかの一般のお宅に別れているが

     「橋本醬油醸造所」 ジョウホンの醬油である。

  江戸時代には この川を上り下りする舟の河岸をもつ 舟問屋が 並んでいた場所である。
  ふじみ野市側は 「福岡河岸」と呼ばれ、 現在も 資料館があり当時の様子を見ることが出来る。

     福岡河岸資料館
          福岡河岸記念館

  反対側は 「古市場(ふるいちば)河岸」と 呼ばれた江戸時代川越城の草創期からの河岸であって、
  あとから出来た福岡河岸より 古いからの地名であろうか。
  その廻船問屋の「橋本屋」が、江戸後期・明治期に醬油業を営んでいた。

 橋本醸造所 ぐーぐる写真地図  


   平成8年(1996)5.24.喜多河信介 新河岸川 養老橋 
    福岡河岸記念館前から上流 白山神社の森を 描いたものであろうか

   養老橋

 さて この
 福岡河岸から、東方の・・・今は冨士見道路の脇に建つ 城北埼玉中高校の門前に向かう 昔からの道と
 養老橋を渡って右にカーブする新しい改修道路になるが、 橋を渡った 左と右が 橋本屋であり、 
 福岡河岸から見ると 養老橋の上流・左側が 商店住まい。 下流・右側が 醸造所になっていた。  


私は 長い間、この絵は、その対岸の上流の白山神社から見た 橋本邸を描いたとばかり思っていのだが・・・
  こうやって比較してみると、
    ① 養老橋が描かれていない。
    ② 醸造場の 高い煙突が描かれていない。
  この二つに気づいた。
    下の 川越市の記録昭和53年の写真を見ると 
    大豆を蒸す蒸気抜きの小屋根の付いた 大きな屋根がしっかり描かれているので、
    石垣土手のカーブも描かれて、

  ◎結論
    この絵は 橋本家の本宅ではなく、 
下流の醸造所で、養老橋の上から描かれており、同じ場所から写真も撮られたことがわかった。
    ただ、煙突が省略されていることもわかったが、絵画構成上の理由で 消したものであろうか。

    橋本醸造所写真昭和53年

この向井潤吉の「春塘」の絵は、昭和59年(1984年)行動美術展に出品された。
   橋本家には、展覧会の案内通知があり、
   見物に東京都美術館の会場へ出向いた当主に、
   美術展の図録と絵葉書が 展覧会封筒に入って 向井の名刺と共に手渡された。

   図録の最初の部分、今年の展覧会の目玉という扱い、
   カラー写真で 3番目という 位置に掲載されていたのが、この「春塘」であった。

    行動美術展1984 3番目に春塘 向井潤吉名刺


  時代は 移って、

平成12年(2000年)春 湯河原に この絵がやって来た。
    町立湯河原美術館の前進 湯河原ゆかりの美術館へ

    パンフレットの表紙に この「春塘」の絵が使われたのである。

             向井潤吉展 湯河原ゆかりの美術館
   
     開催が 4月6日より 5月29日迄なので、この絵が選ばれたのかもしれない。
  しかし、「目録」の 
   35番 「春塘」と 並ぶ 34番に「早春の水路」という絵がある。

   春塘 行動美術展絵葉書
       「春塘」(川越市郊外)

     早春の水路 新河岸川昭和57年1982 
       「早春の水路」(川越市下新河岸)
  
  私は 次に この下の絵が、橋本家の本宅、つまり 養老橋を渡っての左側を
     養老橋から 左側を見て 描いたのではないかと思った。
     木々の合間に 白壁が見えるが、橋本家の本母家に続く 土蔵のように思えたからである。


                                             橋本家土蔵
                                           母家に続いていた 白壁の土蔵
 




スポンサーサイト
2017.05.08
コメント記入欄