「斑鳩の里 落陽」をみて
今晩の12ch「美の巨人たち」は
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 奈良に生まれ、大和路の風景を生涯撮影し続けた写真家、入江泰吉。
入江は「待つ」写真家でした。
 この花が咲くまで・・・、あの雲が堂塔にかかるまで・・・。入江は何度でも同じ場所に通います。そして自分のイメージする風景と出会えるまで待つ。何年でも、何十年でも。
そこで待つだけではありません。カメラを構えないときでも、入江は自分の頭の中で思い描いた風景といつ出会えるか考え、常に待っています。 忍耐と根気で入江は自分の描くイメージに合致する写真を撮影します。
その、まさに奇跡の瞬間を捉えたのが、今日の一枚。「斑鳩の里落陽」。それは静かな、静かな黄昏時。画面下に小さく見える塔は法隆寺の五重塔。その横には今まさに落ちようとする夕日。それは彼だからこそめぐり合えた瞬間でした。なぜ入江は大和路にこれほど見せられたのか。そして、この一枚に秘められた壮絶なドラマとは・・・。
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 私はなんども何度も、この写真は見た。見てきた。
 そんな深い思いを込めていたのか・・・・とおもった。

 入江はこの写真に、聖徳太子一族の滅亡をあらわそうとしていたようである。太子の建立した法隆寺五重塔を黒いシルエットにして左下に、その大空を圧倒的なうろこ雲によって太子一族を覆い尽くす蘇我一族。この雲を待って、この夕焼けを待って通ったという。
 白州正子さんが語っている「室生寺駅の下、対岸の線書きの大仏を背景にた枝垂れ桜を撮るに、2・3年も通われたのですか?」と聞いたら、「そうですね、およそ36・7年かなあ」と言ったので呆然としたらしい。
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白木蓮と磨崖仏、これが枝垂れ桜になる。
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自分が行った時の枝垂れ桜の写真に若干彩色。入江の撮ったときより30年後で花付きが良くなっていたようだった。
 
 彼の目はいつも真剣であった。
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 亀井勝一郎、小林秀雄などとの交流も、本も参考にしていた。朝起きたら庭を掃除して、空を見て、風を聞いて、「さて、今日はどこへ行くか・・・・」と決めたらしい。そのときに、ためていた構想にあう場所を決めたのだ。そして出かけていって、どんぴしゃりというときにだけ、シャッターを切ったのだ。

 わたしは、何度、西に法隆寺を臨む、法起寺、法輪寺付近に出かけていっても・・・・あんな夕焼けにであったことはない。やはり、奈良に住まなくては。 
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2006.11.25
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